外資系コンサルのUSCPA学習日記

USCPA取得に際し、その記録及びその他日々思うことを徒然なるままに書き記します。

BIG4:国内M&A動向分析

2019年1月4日に、トムソンロイターから2018年第4四半期のM&A市場リーグテーブルが発表されました。
今回はBIG4のM&Aアドバイザリーファームについて、分析してみたいと思います。

 

BIG4において、ディールアドバイザリーサービスを提供しているファームは以下になります。
・Deloitte:デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社
・EY:EYトランザクション・アドバイザリー・サービス株式会社
・KPMG:株式会社KPMG FAS
・PwC:PwCアドバイザリー合同会社

上記各社の公表案件に関して、以下の内容をグラフにまとめました。
①ランクバリュー
②案件当たりのランクバリュー
③案件数

 

【前提】
今回分析をする上での前提を列挙します。
・ランクバリュー:純粋な取引金額ではなくネットデットを加算したバリュー
・公表案件のため、クローズしていない案件を含む
・不動産案件は含まない
・ランク外のものについては、ゼロ表示

 

【データ】

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【考察】

これらのグラフから各社について言えることをコメントしていきたいと思います。

■Deloitte
Deloitteは、毎年およそ60件程度のディールを扱っており、これはKPMGに次いで多い数です。一方で、直近のランクバリューについてはランク外であり、過去データを見ても扱うディールサイズは小さいことが分かります。

Deloitteは、2018年3月より中堅・中小企業向けM&Aマッチングプラットフォーム「M&Aプラス」というサービスの提供を開始しており、事業承継等を対象とした小粒案件の取扱件数を伸ばすことによって、収益拡大を目指していることが伺えます。

採用については、BIG4の中で最も積極的におこなっており、経験を問わずポテンシャルがあれば採用しています。

■EY
色々な事件はあるものの依然として監査法人が強いEYですが、ディールアドバイザリーサービスについてはそれほど結果を残せていません。ランクバリュー及び案件数共に他のBIG4ファームに後れをとっています。

監査クライアントが多いため、独立性の問題でサービス提供に制限があって事業拡大できない、という考え方も可能です。しかしながら、コンサルティングやリスクアドバイザリーサービスを提供するEYアドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社は収益拡大している点を鑑みると、監査法人の影響だけでは説明できないと考えます。

採用についても他ファームほど積極的でなく比較的少数精鋭であるため、取り扱う案件の規模や数は少なくなります。

■KPMG
KPMGは、ランクバリュー及び案件数共に上位で推移しています。100億円規模の案件を安定的に獲得し、堅実に収益を拡大していると言えます。他BIG4と比較して、提供サービスのクオリティを重視している印象のあるKPMGですが、そのクオリティの高さ故にリピーターが多いようです。

採用についても、積極的に求人を出してはいるものの、クオリティを保つためにDeloitteほどオファーは出しておらず、基本的には経験者を採用する傾向にあります。

■PwC
PwCは、取り扱う案件数はそれほど多くないものの、直近のランクバリューがKPMGに次いで2位です。案件あたりのランクバリューは、直近2年で1位となっています。ディールサイズが比較的大きい案件を回すことで収益を獲得していると言えます。

他のBIG4ファームとの大きな違いは、外資会社が日本の会社を買収するOUT-INの案件に力を入れていることです。世界で影響力のある事業会社がクライアントであるため、その分ディールサイズも大きくなると思われます。今後もこのグローバルネットワークを生かした戦略を継続するようです。

採用に関しては、BIG4の中で唯一OPENに新卒の採用をおこなっているファームです。事業再生に強みのあるファームなので、新卒が最初からM&Aにがっつり入り込むことは少ないようですが、事業再生のソリューションとしてM&Aはついてくるので、案件を通して経験を積んでいくようです。そういった意味では、他ファームと比較して、人を育て慣れていると言えるかもしれませんね。

 

長くなりましたが、以上です。